音もなく降りしきるかな青き雨 煙(けぶ)る月見ゆ夏の狭霧に
滴塵044
本文
音もなく降りしきるかな青き雨 煙(けぶ)る月見ゆ夏の狭霧に
形式 #短歌
カテゴリ #5.自然・風景
ラベル #雨 #月 #夏 #自然現象
キーワード #青き雨 #狭霧 #月見 #降りしきる #夏
要点
静かに降る夏の雨と、霧に包まれた月の幻想的風景。
現代語訳
音もなく降り続く青い雨。夏の狭霧は煙のようで、その向こうに月が見える。
注釈
音もなく降りしきる:静かに、しかし絶え間なく続く。心の奥で続く悲しみや無常の作用のメタファー。
青き雨:感情を排した冷たい雨、または清らかさの表現。
狭霧:細かい霧。
けぶる:煙のように立ち込める。霧や雲に覆われ(てぼやける)
月:悟りの象徴。
解説
自然の繊細な情景を五感で描写。雨や霧、月の組み合わせが幻想的な風景を作り、静謐さと儚さを表現する。また、客塵煩悩に覆われた悟りをも意味する。
深掘り_嵯峨
滴塵017や019と異なり、ここでは静寂の中の憂愁が描かれています。
「音もなく」降る雨は、気づかぬうちに進行する無常や、深い孤独を象徴しています。その中で見える「煙る月」は、真理(月)が完全には見えない(霧に覆われている)という、悟りへの道のりの難しさを示唆しています。
激しい感情ではなく、静かに持続する寂寥感と、わずかに見える真理の影を捉えた、清澄で感傷的な一首です。