音もなく降りしきるかな青き雨 煙(けぶ)る月見ゆ夏の狭霧に
滴塵044
本文
要点
現代語訳
音もなく降り続く青い雨。夏の狭霧は煙のようで、その向こうに月が見える。 注釈
青き雨:感情を排した冷たい雨、または清らかさの表現。 けぶる:煙のように立ち込める。霧や雲に覆われ(てぼやける) 解説
深掘り_嵯峨
滴塵017や019と異なり、ここでは静寂の中の憂愁が描かれています。 「音もなく」降る雨は、気づかぬうちに進行する無常や、深い孤独を象徴しています。その中で見える「煙る月」は、真理(月)が完全には見えない(霧に覆われている)という、悟りへの道のりの難しさを示唆しています。